探究学習の仕上げとしての論文

「探究」の学びを「論文学習」で促進する

学習指導要領が改訂され、中学校では2021年度から、高校では2022年度からの全面実施に向けて、今多くの学校でその準備がスタートしています。

特に注目されるのが、「知識、技能」の習得だけでなく、「思考力、判断力、表現力」の醸成のために「探究」という学び方がはじまること。

この「探究」の取り組みで成果を上げるためには、 「課題の設定 → 情報の収集 → 整理・分析 → まとめ・表現 」といった学びのプロセスを効果的に実現する必要があります。

では、このプロセスを成功させるために必要なことは何でしょうか?

実はこのプロセス自体は、学びの手順として目新しいものではなく、率先してやるやらないや得手不得手はあっても、「今日はこれをやろう。そのために調べたり整理したりしてまとめよう」ということは、普段生徒たちが宿題をやるときにさえ通る道筋です。

それでも、多くの学校がこの「探究」という新しいスタイルの授業に頭を悩ませているのはなぜなのでしょうか?
それはきっと、人が自分でものごとを進めるときに自然と通る道筋を、長い間「教える」ということを中心としてきた授業の手順に、意図的に落とし込むことに難しさがあるからでしょう。

その解決策として、全体の改革の前にあるひとつの取り組みをはじめる学校が増えています。
それが「論文学習」の活用。
入試対策としての小論文指導もありますが、それも兼ねながら「探究」の成果を上げようというものです。

これまでの総合学習でも、課題解決の結果をプレゼンテーションさせるケースはよくありました。
ただこれもプロセスを管理できないと、「調べて発表して終わり」という結果になってしまいます。

「調査からプレゼン」は定着したひとつの形ですが、その学びの質を上げるとともに、そこに加えたのが論文の取り組み。
今度の「探究」では、課題解決だけでなく、生徒自身による課題発見も求められるため、それを達成する方策として論文執筆に取り組ませようというわけです。

それは、「自ら課題を設定し、調べて考えて整理しながら客観的なものに仕上げる」という論文執筆の過程が、探究という学習のスタイルに非常によくマッチするものだからです。

さらに論文は、総合探究だけでなく、各教科・科目の学びとの組み合わせも容易。
ここに着目した多くの学校が、今一斉に論文学習に力を入れるようになったのです。

論文を書くことのハードルと、その超え方

ところが、そんな目的のもとに採用した論文指導にもたくさんの問題が出てきました。

「もともと意欲のある生徒はできるけど、意欲の持てない生徒はどれだけ指導してもできるようにならない」
「授業が先生の経験の有無に左右されてしまい、学年全体での取り組みにするのが難しい」

どのような生徒でも一律で体系的に論文の書き方を学べるようにするため、その指導方法について、多くの先生方が試行錯誤をされているのが現状です。

そこで今回は、実際に先生から出ている論文の取り組みにおける諸課題をもとに、それらの課題を解決する、探究学習に最適な「論文」が題材の学習プログラムについてご紹介します。

生徒の主体性を引き出すTWICE PLAN『論文ワーク』

論文学習を主体的に進めるために必要なことは、まず生徒自身に「書くためのモチベーション」を提示することです。

これは“モチベーションを与える”ということとは違います。
与えるのであれば、それはまだ生徒を主体的に扱っていません。

TWICE PLANの『論文ワーク』では、それを複数の方法でサポートしていきます。
その中の2つを取り上げてみます。

1つめが「チームの力を活用する」こと、2つめが「スモールステップで進める」ことです。

1. チームの力を活用する

論文執筆の目的はそもそも、「自分の伝えたいことを表現すること」。
生徒が論文に対して苦手意識を持つことの原因として、「自分の伝えたいことが見つかっていないままいきなり文章を考えようするため、うまく書けない経験をする」ということがあります。

ですから、主体的に論文に取り組む力を引き出すためには、自分の伝えたいことが伝わる楽しさをベースにすることがとても重要です。なぜならその楽しさがあれば、生徒は自然に論文の書き方を学びたくなるからです。

そのために、このワークではチームの力を活用します。
チームメイトと対話を繰り返し、コメントや質問を受け取ることで、「自分の伝えたいこと」を届ける意欲を得ます。

では、ここで取り組んだ生徒の「論文に対する苦手意識」のアンケートを見てみましょう。

“論文に対する苦手意識が払拭され、主体性が向上

TWICE PLAN『論文ワーク』に取り組んだ生徒からは、「論文は難しいものだと思っていたけど、型通りにやってみたら意外と簡単なものなんだとわかりました」「あまりうまくは書けなかったけど、もう1回やってみたいと思いました」といった声が多くあがりました。

論文の出来栄えについては生徒によってさまざまですが、多くの生徒が「自分の伝えたいことを他者に伝える楽しさ」に気づき、「うまくは書けなかった」という生徒も、論文に対する主体性が飛躍的に高まりました。

Q. 以前より文章執筆を好きになることができましたか?
ー 2017年度『論文ワーク』自己評価シート結果 (473名の生徒が回答)

ー論文ワーク実施後のアンケートでは、81%の生徒が「できた」と回答。また、できたと答えた生徒の52%が「以前より文章を書くことが好きになった」と回答しています。多くの生徒が自分の伝えたいことを他者に伝える楽しさに気づく結果となりました。

はじめは文章を書くことに抵抗感を持っていた生徒も、書いていくうちに一緒に取り組む仲間と主体的に執筆を進めていたことがわかります。

Q.「今回の経験を活かしてまた文章を書きたい」と思うことができましたか?
ー 2017年度『論文ワーク』自己評価シート結果 (473名の生徒が回答)

「今回の経験を活かしてまた文章を書きたいと思うことができた」生徒が80%でした。

「自分の気持ちを他の人に伝えることが難しかったけど、自分なりに表現することができ、また挑戦したい」と答える生徒も多く、表現することに対する主体性が高まったことがわかります。

2. スモールステップで進める

生徒がうまく論文を書けないことのもう1つの原因として、単純に論文の型を知らない、ということがあります。

そのため論文ワークでは、ワークシートに沿ってスモールステップで進めていくことで論文の型が自然に理解できるように設計されています。

これは、文章を書くことが得意な人であれば必ずやっているプロセスを簡単な方法でナビゲーションするものであり、それをたどっていくだけで論文のカタチができ上がっていくのを体験し、慣れていくための仕掛けです。

わからないことは誰でも前向きに取り組みにくいものですが、論文の型が簡単に身につけば、それだけで取り組みの意欲がわき、主体性も引き出されていきます。

では、取り組んだ生徒が論文の書き方をどれだけ身につけたのか、自己評価シートの結果を見てみましょう。

Q.論文の書き方について理解できましたか?
ー 2017年度『論文ワーク』自己評価シート結果 (473名の生徒が回答)

93%の生徒が「できた」と回答。中でも「73%」の生徒が論文の書き方について「とてもよく理解できた」「理解できた」と回答しました。
ワークシートに沿ってスモールステップで型を学んだことで、論文の書き方を身につけていたことがわかります。

Q.調べた事実を使って説得力のある文章が書けましたか?
ー 2017年度『論文ワーク』自己評価シート結果 (473名の生徒が回答)

94%の生徒が「できた」と回答。中でも「72%」の生徒が「調べた事実を使って説得力のある文章が書けた」と回答しました。
多くの生徒が調べたことを整理・分析して、説得力のある文章に落とし込むプロセスを経験し、探究の学びが実現されていたことがわかります。

探究を仕上げる論文の取り組み

授業の中に「主体的に論文を書くプロセス」を組み込む方法は、思考力も表現力も高め、今必要とされる生徒の学びを実現する非常に有効な方法です。

PBL『論文ワーク』事例

CASE 01 目黒日本大学高校

「“探究学習のまとめの論文”を主体的に書くことが目標」

目黒日本大学高校では、2年次に「これまで実践してきたさまざまな探究学習を振り返り、学んだことのまとめを論文で表現する」という取り組みを行っています。

その準備として実施をはじめた『論文ワーク』初回の授業では、論文を書くための土台づくりとして、チームをつくり、チームメイトに自分が伝えたいことを伝える楽しさを体験。

チームメイトとの対話をとおして、自分の表現したいことを客観的に理解し、論理的に書いていくための感覚をつかんでいきました。

目黒日本大学高校『論文ワーク』授業レポート

<実施概要>
学校名:目黒日本大学高校
学年:高校2年生
教科:総合探究
授業コマ数:4コマ
導入目的:探究学習のまとめの論文に、生徒が主体的に取り組めるようにするため

CASE 02 淑徳巣鴨中学校

「LHRで卒業論文を執筆」

2018年度、淑徳巣鴨中学校では、生徒主体で卒業論文を制作できるようになることを目的として、3年生がLHRの時間で『論文ワーク』に取り組みました。

対話と発表を繰り返して、だんだんと伝えることと書くことに慣れていきながら、最終的に卒業論文のテーマを自ら設定して執筆。

論文の発表を終えた生徒からは、「書いたり表現したりすることは苦手だと思っていたけど、周りが発表を聞いてくれることに気づいてがんばろうと思えました」「文字やことばだけでなく、それを伝えるときの表情や姿勢も大事だと気づいて、そのことも精一杯磨きました」といった感想が聞かれました。

“自分を基点に書く”ことで、文章への苦手意識を自信に変え、人に伝えるための発表方法まで工夫して考えるようになるなど、自然に主体的な学びを実現していました。

2018年度淑徳巣鴨中学校『論文ワーク』事例

<実施概要>
学校名:淑徳巣鴨中学校
学年:中学3年生
教科:LHR
授業コマ数:12コマ
導入目的:卒業論文の制作

TWICE PLANには、今回ご紹介した他にもたくさんの実施事例があります。

総合的な探究の時間の取り組みや、論文ワークに関するお問い合わせは、メールフォーム、または、お電話03-6861-3553でお気軽にご連絡ください。

TWICE PLANでは、生徒が探究しながら論文の書き方をトレーニングできるPBL型の『論文ワーク』を中学・高校・大学にご提供しています。
ワークの詳細はこちらのページをご覧ください。