「探究的な学び」で、本物のグローバル教育を実現する

グローバル教育の今

急速に変化するグローバル社会で生徒たちが活躍できるように、さまざまな“グローバル教育”の取り組みが行われています。

・英語4技能対策のネイティブ講師によるオールイングリッシュ授業
・国際交流や海外語学研修などを通じた国際理解教育
・地球的課題に当事者意識を持つために「SDGs」について学ぶ授業

このような多岐にわたる取り組みで、これからの時代に必要な“グローバル人材”の育成を目指す動きが各校で活性化。

文部科学省でも「Society5.0」実現に向けた新しい取り組みとして、「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」をスタートさせるなど、その動きが注目されています。

さまざまな教育改革、学校改革が進み、これまでの学び方を大きく変える必要に迫られる学校で、グローバル教育にまつわる課題は多岐に渡ります。
ただそれらを見ていくと、絞られる声がこの2つ。

「国際理解と言っても、単なる調べ学習で終わってしまうことが多い」
「英語が得意な生徒はよく学ぶけれど、そうでない生徒はほとんど学べない」

では、何が原因でそのようなことになっているのでしょうか?
どうすればこの課題を解決して、有効なグローバル教育ができるようになるのでしょうか?

「何を学ぶか」に比重が置かれている

全ての教育の失敗は、そこに学びの当事者がいないことです。
学ぶべき生徒が、題材に何の興味関心も持っていなければ教育効果はあがりません。

生徒が自分にとっての関わりを全く見出せず、当事者としてそこにいないのですから、教育として成立しないのは当然のことです。

よく言われることですが、英語は言語であり、使うためのものです。
人が母国語を自然と使えるようになるのは、そこに必要性がはっきりとあるからであり、まさにそれを学ぶ当事者だからです。

「英語」「異文化コミュニケーション」「SDGs」といった“対象”を学ぶこと、つまり「何を学ぶか」だけに比重を置いてしまうと、そこに興味のある=当事者意識のある生徒だけが反応し、そうでない生徒はなかなか動きません。
クラス全体が消極的だと、興味のある生徒が力をセーブしてしまうこともあるでしょう。好きなことはひとりで熱心にやった方が楽しいからです。

世の中には、英語を使う場面や異文化に触れる場面、世界の課題を知って心が動く場面は至るところにあります。
それはあくまでもその当事者が出会う出来事です。
そしてその出来事に刺激を受け、そこに自分自身が必要性を感じるとき、学びに向かう姿勢が自動的にでき上がります。

これが「どのように学ぶのか」の本質です。
「何を」ではなく「どのように」というと、ただ「どのように」の手法を探してしまいがちですが、それではただ「何」を「どのように」にすげ替えただけです。

「どのように学ぶのか」を実現するには、生徒自身の気持ちが動く学習環境をどうつくるのかということが重要なのです。

ただネイティブの先生に話しかけられて、課題を英語でこなすだけでは、英語に関心のない生徒にとって何も響かず、当事者不在であることを解決できません。

「どのように学ぶのか」に比重を置く

グローバル教育や英語の実技は、「主体的」な学び方が特に有効な分野です。
題材が世界であり、そこで使う言語の習得ということを考えれば、それを「誰が」学ぶのかというのはそもそものスタートにあるべきです。

そこに「対話的」という要素を入れると、それはより立体的に動き出します。
よくコミュニケーションという言い方をしますが、それだけでは授業で何をするのか具体的なイメージは湧きにくいもの。

対話には目的があり、そこから「新しい意味を見出す」ということが必要です。
これが深い学びになっていくわけですが、チームやクラス全体で対話をして、今まで気づかなかった新しい意味や価値を見つける。
対話というのは、そもそも自分が話すときは当事者ですから、主体です。
そこに新しい意味の発見があり、「そんなこともあるの?」「そうだったんだ!」と、次第に心が動きはじめると、その当事者は生き生きとしてくるものです。

「どのように学ぶか」を「アクティブラーニング」と説明されることもありますが、この“主体者が生き生きと動き出すこと”がそのスタートです。

異文化理解であれ、語学習得であれ、生徒が主体者として生き生きと学ぶためのアクションを整えれば、題材は何であっても探究的な学びになっていきます。

具体例として、「グローバル」がテーマの探究学習プログラムが、どのような手順で実施されているかについてご紹介します。

地球上のできごとを世界中に届ける当事者として活動する
TWICE PLAN『グローバルリサーチワーク』

このワークではまず、クラス全員が「リサーチャー(調査員)」になります。
今地球上で起こっていることを、世界中に知らしめるための「リサーチャー」です。

「自分たちの調べたことを世界中に届ける」というプロジェクトには、ワクワク感を抱く生徒もいれば、「責任感重大だ!」と、ある意味プレッシャーを感じて気持ちが動く生徒もいます。
いずれにせよ、そのような設定で取り組むことで、生徒自身の気持ちが動く学習環境をつくることがスタートです。

リサーチャーは、当然世界について詳しくなければいけないし、自分なりの考察ができなければいけません。
そのため、リサーチャーとなった生徒たちは、世界を知るべき当事者として「いま世界で起きていること」を調べ、それを世界にどう発信するのかを自分たちなりに考え続けます。

手順としては、
一緒に活動するチームを結成する→リサーチの目的(テーマ)を決める→リサーチ方法と役割分担を決める→活動開始!

“調べる視点も調べ方も自分たちで話し合って決める”という手順を踏むことで、徐々にリサーチャーとしての当事者意識が成長していき、自分たち自身の力で取り組みが発展していきます。

このように、世界をリサーチする当事者として活動した生徒たちは、結果として多くのことを学びます。

異文化コミュニケーションの本質は何なのか、世界の貧困問題を解決するためにいま自分ができることは何なのか、英語が使えることの本当の価値、などなど。
これらは、グローバル社会で活躍するにはどれも重要な気づきです。

当事者としての学びは、「決められた学習の範囲」といったものを持たないため、そのあとも生徒の中で成長し続け、自分の意見を持って人と関わることのできる土台になります。

記述が増えると言われる新入試や、社会に出たあとのコミュニケーションのために大いに必要な学び方と言えるでしょう。

では最後に、そのような学び方でこのワークに取り組んだ生徒の「自己評価シート」の結果を見てみましょう。

Q. 世界の課題に対して自分ができることを見つけることができましたか?
ー 2017年度『グローバルリサーチワーク』自己評価シート結果 (196名の生徒が回答)

93%の生徒が「世界の課題に対して自分ができることを見つけられた」と回答し、
地球的課題に対する当事者意識を醸成できたことがわかります。

Q. 自分の得意なことや好きなことに気づくことができましたか?
ー 2017年度『グローバルリサーチワーク』自己評価シート結果 (196名の生徒が回答)

82%の生徒が「自分の得意なことや好きなことに気づくことができた」と回答し、この取り組みをとおして、グローバル社会で自分の力をどのように生かしていけるのかを考え、多少でも将来を展望する機会になったことがわかります。
学校でこのような授業を構築される際は、こうしたアンケートを実施し、学びのPDCAが回るように進めていくことも重要です。

ご紹介したワーク以外にも、グローバル教育で活用できる学習プログラムや、先生方のための研修やワークショップもご提供しています。

◆修学旅行の事前事後学習として「探究の学び」ができる『ワールドツアーズワーク』『ジャーニーワーク』
◆先生方のための探究学習研修『TWICE PLAN ティーチャーズ・トレーニング』

総合的な探究の時間の取り組みや、グローバルリサーチワーク、ティーチャーズ・トレーニングに関するお問い合わせは、メールフォーム、または、お電話03-6861-3553でお気軽にご連絡ください。